人形使い
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)田舎《いなか》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|度《ど》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ひょっとこ[#「ひょっとこ」に傍点]
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一
むかし、ある田舎《いなか》の小さな町に、甚兵衛《じんべえ》といういたって下手《へた》な人形使《にんぎょうつか》いがいました。お正月だのお盆《ぼん》だの、またはいろんなお祭《まつ》りの折《おり》に、町の賑《にぎ》やかな広場に小屋《こや》がけをして、さまざまの人形を使いました。けれどもたいへん下手《へた》ですから、見物人《けんぶつにん》がさっぱりありませんで、非常《ひじょう》に困《こま》りました。「甚兵衛の人形は馬鹿《ばか》人形」と町の人々はいっていました。
甚兵衛は口惜《くや》しくてたまりませんでした。それでいろいろ工夫《くふう》をして、人形を上手《じょうず》に使おうと考えましたが、どうもうまくゆきません。しまいには、もう神様《かみさま》に願《ねが》うよりほかに、仕方《しかた》がないと思いました。
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