たは一|儲《もう》けなさい。私も山の中より町の方が面白《おもしろ》いから、御飯《ごはん》だけ食《た》べさしてくだされば、長くあなたの側《そば》に仕《つか》えて、人形を踊《おど》らせましょう」
なるほど猿《さる》が中にはいっておれば、人形がひとりでに踊《おど》るのも不思議《ふしぎ》ではありません。甚兵衛は手を打《う》って面白《おもしろ》がりました。
やがて町の祭礼《さいれい》となりますと、甚兵衛《じんべえ》は一番|賑《にぎ》やかな広場に小屋《こや》がけをしまして、「世界一の人形使い、独《ひと》りで踊《おど》るひょっとこ[#「ひょっとこ」に傍点]人形」という看板《かんばん》をだしました。町の人たちは、あの馬鹿《ばか》甚兵衛がたいそうな看板《かんばん》をだしたが、どんなことをするのかしらと、面白半分《おもしろはんぶん》に小屋《こや》へはいってみました。
正面《しょうめん》に広い舞台《ぶたい》ができていました。間《ま》もなく甚兵衛は、大きなひょっとこ[#「ひょっとこ」に傍点]の人形を持《も》ちだし、それを舞台《ぶたい》の真中《まんなか》に据《す》えまして、自分は小さな鞭《むち》を手に持《
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