《し》んでしまいました。

     二

 首尾《しゅび》よく大蛇退治《おろちたいじ》ができましたので、猿《さる》はたいへん喜《よろこ》びました。
「お蔭《かげ》で山の中の獣《けもの》は、皆《みな》助《たす》かります。これから、お約束《やくそく》ですから、上手《じょうず》に人形を使うことを、あなたにお教《おし》えしましょう。ただ黙《だま》って、私のいうとおりになさらなければいけませんよ」
 甚兵衛《じんべえ》は承知《しょうち》しました。猿《さる》は甚兵衛の家へやってきました。そして家にある人形を皆《みな》売ってしまいなさいといいました。甚兵衛は人形を残《のこ》らず売ってしまいました。すると猿《さる》はいいました。
「三日の間《あいだ》、この人形|部屋《べや》にはいってはいけません。三日たったらこの部屋《へや》においでなさい、すると大きな人形が一つ立っています。その人形はなんでも、あなたのいうとおりにひとりでに動《うご》きます」
 甚兵衛《じんべえ》は不思議《ふしぎ》に思いましたが、ともかくも猿《さる》のいうとおりにして、三日間人形|部屋《べや》の襖《ふすま》を閉《し》め切って置《お》
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