《こた》えました。
「お前さんが私を上手《じょうず》な人形使いにしてくれるなら、頼《たの》みを聞《き》いてあげよう」
そこで猿《さる》はたいそう喜《よろこ》びまして、頼《たの》みの用をうち明けました。用というのは、大蛇《おろち》を退治《たいじ》することでした。いつの頃《ころ》からか、山に大蛇《おろち》がでてきまして、いろんな獣《けだもの》を取っては食《た》べ、猿《さる》の仲間《なかま》までも食《た》べ初めました。それでこの猿《さる》は、さまざまに工夫《くふう》をこらして、大蛇《おろち》を山から逐《お》い払《はら》おうとしましたが、どうしても敵《かな》いませんでした。そして甚兵衛《じんべえ》に、大蛇退治《おろちたいじ》を頼《たの》んだのでした。
「お前はなんでもできるといったのに、大蛇位《おろちぐらい》なものに負《ま》けるのかい?」と甚兵衛はいいました。
「はい」と猿《さる》は面目《めんぼく》なさそうに答《こた》えました。「智慧《ちえ》でなら誰《たれ》にも負《ま》けませんが、力ずくのことは困《こま》ってしまいます。甚兵衛さん、どうかその大蛇《おろち》を退治《たいじ》てください」
甚兵
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