て置《お》いたのです。それを見て猿《さる》は、鬼《おに》の人形の中からどなりつけました。
「不都合《ふつごう》な奴《やつ》だ。しかしおとなしく人形をだしたから、命《いのち》だけは助《たす》けてやる。どこへなりといってしまえ。またこれから泥坊《どろぼう》をすると許《ゆる》さんぞ」
 盗賊《とうぞく》どもは震《ふる》えあがって、逃《に》げうせてしまいました。
 猿《さる》は鬼《おに》の中からでてきて、甚兵衛と二人で、壊《こわ》れた人形を抱《だ》いて、非常《ひじょう》に悲《かな》しみました。けれども、いくら悲《かな》しんでもいまさら仕方《しかた》はありません。二人は壊《こわ》れた人形を持《も》って、田舎《いなか》の町へ帰《かえ》りました。
 甚兵衛はもうたいへん金を儲《もう》けていましたし、壊《こわ》れた人形を見ると、再《ふたた》び人形を使う気にもなりませんでした。猿《さる》も都《みやこ》を見物《けんぶつ》しましたし、そろそろ元《もと》の山にもどりたくなってる折《おり》でした。それで二人は、壊《こわ》れた人形を立派《りっぱ》に繕《つくろ》って、それを山の神社《おみや》へ納《おさ》めました。猿
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