ひそひそ相談《そうだん》をしていました。よく見ると、それがあの盗賊《とうぞく》どもではありませんか。甚兵衛はびっくりして、見られないように逃《に》げだしてきました。そして猿《さる》にそのことを告《つ》げました。
「もう大丈夫《だいじょうぶ》です」と猿《さる》はいいました。「人形は盗賊《とうぞく》どもの所《ところ》にあるに違《ちが》いありません。私が行って取りもどしてきましょう」
甚兵衛は危《あぶ》ながりましたが、猿《さる》が大丈夫《だいじょうぶ》だというものですから、そのいうとおりに従《したが》いました。
晩《ばん》になりますと、二人は鬼《おに》の人形をかついで、盗賊《とうぞく》の古寺《ふるでら》へ行きました。それから猿《さる》は人形の中にはいって、一人でのそのそ本堂《ほんどう》にやってゆきました。本堂《ほんどう》の中には蝋燭《そうそく》が明るくともっていましたが、盗賊《とうぞく》どもは酒《さけ》に酔《よ》っ払《ぱら》って、そこにごろごろ眠《ねむ》っていました。
「こら!」と猿《さる》は人形の中から大きな声でどなりました。
盗賊《とうぞく》どもはびっくりして起《お》きあがりますと
前へ
次へ
全22ページ中19ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング