《かえ》って、その話を猿《さる》にいってきかせ、占《うらな》い者《しゃ》の言葉《ことば》を二人で考えてみました。地獄《じごく》に居《い》るが訳《わけ》はないというのが、どうもわかりませんでした。二人は一晩《ひとばん》中考えました。そして朝になると、二人ともうまいことを考えつきました。
 甚兵衛はこう考えました。
「これはなんでも、地獄《じごく》に関係《かんけい》のある古いお寺《てら》か荒《あ》れはてたお寺《てら》に違《ちが》いない」
 猿《さる》はこう考えました。
「地獄《じごく》のことなら鬼《おに》の思うままだから、鬼《おに》の人形をこしらえたら、それであの人形が取りもどせるだろう」

     五

 それからは、猿《さる》は大きな鬼《おに》の人形をこしらえ、甚兵衛《じんべえ》は荒《あ》れはてた寺《てら》を尋《たず》ねて歩きました。ちょうど都《みやこ》の町はずれに、大きな古寺《ふるでら》がありましたので、甚兵衛はそっと中にはいりこんで様子《ようす》を窺《うかが》ってみますと、畳《たたみ》もなにもないような荒《あ》れはてた本堂《ほんどう》のなかに、四、五人の男が坐《すわ》って、なにか
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