上は、盗賊《とうぞく》の住居《すまい》を探《さが》しあてて人形を取り返《かえ》すよりほかはありません。
 それから毎日、昼間《ひるま》は甚兵衛《じんべえ》がでかけ、夜《よる》になると猿《さる》がでかけて、人形の行方《ゆくえ》を探《さが》しました。けれどなかなか見つかりませんでした。ちょうど半月《はんつき》ばかりたった時、その日も甚兵衛は尋《たず》ねあぐんで、ぼんやり家に帰《かえ》りかけますと、ある河岸《かし》の木影《こかげ》に、白髯《しろひげ》の占《うらな》い者《しゃ》が卓《つくえ》を据《す》えて、にこにこ笑《わら》っていました。甚兵衛はその白髯《しろひげ》のお爺《じい》さんの前へ行って、人形の行方《ゆくえ》を占《うらな》ってもらいました。
 お爺《じい》さんはしばらく考えていましたが、やがてこういいました。
「ははあ、わかったわかった。その人形は地獄《じごく》に居《い》る。訳《わけ》はないから取りに行くがいい」
 甚兵衛はびっくりして、なおいろいろ尋《たず》ねましたが、白髯《しろひげ》のお爺《じい》さんは眼《め》をつぶったきり、もうなんとも答《こた》えませんでした。
 甚兵衛は家に帰
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