めておいて、それだけをやることにしました。
四
ところがその都《みやこ》に、四、五人で組《くみ》をなした盗賊《とうぞく》がいまして、甚兵衛の人形の評判《ひょうばん》をきき、それを盗《ぬす》み取ろうとはかりました。そしてある晩《ばん》、にわかに甚兵衛の所《ところ》へ押《お》し入り、眠《ねむ》ってる甚兵衛を縛《しば》りあげ、刀《かたな》をつきつけて、人形をだせと嚇《おど》かしました。甚兵衛はびっくりして、あたりを見|廻《まわ》しましたが、猿《さる》はどこかへ逃《に》げてしまって居《い》ませんし、まごまごすると刀《かたな》で切られそうですから、仕方《しかた》なく人形のある室《へや》を教《おし》えました。盗賊《とうぞく》どもは人形を奪《うば》うと、そのままどこかへ行ってしまいました。
盗賊《とうぞく》どもが居《い》なくなった時、押入《おしいれ》の中に隠《かく》れていた猿《さる》は、ようようでてきて、甚兵衛の縛《しば》られてる繩《なわ》を解《と》いてやりました。けれども盗賊《とうぞく》どもが逃《に》げてしまった後《あと》なので、どうにも仕方《しかた》がありませんでした。ただこの
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