の日久保田さんは、三十分ばかり早めに起上ることが出来た。下働きの女中が慌てて起上ってくるのを、横目でじろりと見やっておいて、すぐに庭へ飛び出した。
まだ明けたばかりのだだ白い明るみだった。なるべく庭の隅の方へ行って、樹木の新芽を見い見い待ち受けてみた。暫くすると果してお清が、竹箒を持って急いでやって来た。
「あら!」
喫驚したように立止ったのへ、久保田さんは戦勝者みたいな笑顔を見せた。
「掃いても構わないよ。」
眼を伏せて「はい」と答えておいて、彼女は静に掃きにかかったが、どうしたのか次第に性急になってきた。はあはあと吐く息が白く凝って流れ、白々とした顔にほんのり赤味がさしてきた。
その様子をじっと見ていた久保田さんは、やがて歩み寄ってきて、落凹んだ眼をくるくるとさした。
「わしはいろんなことを研究しているんだが、運動をした際には、どうも人の身体は軽くなるように思える。そこで……。」そんな風に云いながら、肩をそばめてつっ立ってるお清の手から、竹箒を取ってそれを例の木立に立てかけた。「じっとしていてごらん。」
咄嗟に一歩後ろへ廻って、薄いメリンスの帯のあたりへいきなり手をかけて
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