の通りお清に出逢った。此度は自分の方から微笑みかけて、応えの笑顔を見てから、すぐに云い出した。
「手相をみてあげるから、手をかしてごらん。」
「あら、またでございますか。」
「昨日のは間違っていた。男の手相をみるのは左手だが、女のは右手でなくちゃいけない。右手を出してごらん。」
ちらと動いた彼女の眸の光を捉えると、久保田さんの胸の中はぱっと明るくなった。そして彼女の右手を取ったが、どうしたはずみにか、その四本の指先を軽く握りしめた。ぽちゃぽちゃした円っこい四つの感触を掌に感じたのと、胸に擽ったい薄ら寒さが起ったのと、彼女が心持ち顔を赤らめたのとが、殆んど同時だった。そして次の瞬間に、久保田さんは肩をぴくりとさして手を離した。
「いや、立派な運だ。」
云い捨てておいて久保田さんは、また庭の中を歩き続けて、食事になるまで家へはいらなかった。
その日も頭がよくて、仕事が捗った。
所が次の朝、久保田さんは食事になるまでお清に出逢わなかった。そして妙なことには、庭が綺麗に掃き清められていた。
「ははあ、なるほど。」と久保田さんは独り首肯いた。
前晩から一生懸命に心して寝ただけあって、次
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