ました。頭が禿げかかってるせいでもありますまいが、ばか丁寧な口の利きようをするくせに、いやに図々しく、月にどのくらい食いこみになりますか、それは困ったものですね、少しのことなら御用達しましょうと、そういった調子なんです。店の造作も少し変えた方がいいでしょうと、いろいろ指図までするんです。もう叔母が亡くなってからは私一人で、小女が二人いても相談相手にはならず、だんだんやりきれなくなって、平賀さんに相談してみますと、初めにこれこれ出そう、そして月々百五十円、但し向う三年間のことにしょうじゃありませんかって、はっきりしています。私も少しおかしくなって、始終入りびたりでは困りますよと、冗談を云ってみると、いや月に一回か二回だって、澄したものです。私の身体のことなんか、更に感情のことなんか、まるで問題でなく、一言の断りもなくて当然の条件となっていたのです。あまりさっぱりしてそしてはっきりしているので、私もうかうか乗ってしまいました。あまり明かに物品扱いをされますと、自分でも気がつかないで、通り越してしまうのかも知れません。売笑婦なんかも、そうなんではないかと思われます。
ところが、それより少し
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