せん。
 その淵《ふち》には、村の子供たちが時々釣にくることがありました。私はその子供たちに、この淵で大きななまずを見た者はないかとたずねてみました。
 ここではよく釣針《つりばり》をとられるから、大きななまずかなんか、そんなものがいるかも知れない、という者がありました。
 深いんだからきっといる、という者がありました。
 大きななまずをみたことがある、という者がありました。
 そこで私は、金色の髭をはやしたなまずのことを、話してきかせました。子供たちはびっくりしました。
「まだはっきりはわからないが、ほんとにその珍しいなまずがいたら、みんなで生捕《いけど》ろうじゃないか。そしてここに池をつくって、川の水をひきいれて、みんなで飼おうよ。このままにしておくと、どこかに逃げてしまうかもしれないからね」
 子供たちはすぐにさんせいしました。そしていろいろ用意をし、手はずをきめて、金色の髭《ひげ》のなまずをまちうけました。
 そして毎日、朝から夕方まで、誰かしら番をして、淵《ふち》のなかをそっとうかがいました。ところが一日たち、二日たち、三日たっても、誰もなまずを見た者がありませんでした。
 
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