。赤ん坊はまだすやすや眠っていました。ふうわりと軽くて、まるで綿のようで、頬《ほほ》をつついてみると、つるつるしてやわらかで、かすかに乳《ちち》の匂《にお》いがしていました。
 けれど、あんまり軽くて手ごたえがないので、やがて心配になりました。正夫といっしょに、巡礼の女をさがしに行きました。
 秋の日がいちめんにてっていました。見わたすかぎり、野山《のやま》は黄色く、とりいれのあとのたんぼはくろずみ、空は雲一つなく晴れわたっていました。
 ピーヒョロヒョロ、ピーヒョロヒョロ……。
 とんびの声がします。一羽のとんびが、空たかくゆったりと舞っているのです。
 向こうのたんぼのなかに、五六人の村人たちが、巡礼の女をとりまいて、何やら大声をたてていました。そしてみんな、空をあおいで、とんびを見てさわいでいました。私も見あげました。よく見ると、たくましいとんびで、足に何か赤いものをつかんで大きく円をえがいてとんでいます。ピーヒョロヒョロと、さもうれしそうにゆったりと舞っているのです。私は村人たちの方へやっていきました。
 近くまで行くと、私の方を見て、巡礼《じゅんれい》の女が、いきなりかけだし
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