く、へんな結果になってしまいました。わたくしは翌朝、清さんを慰め、わたくしが後ろについていてやるから落着いていなさいと、いたわってやりました。そしてもう、清さんに対する嫌らしい気持ちは無くなり、杉山さんを憎む気持ちだけになりました。
それからわたくしは、ひそかに清さんの様子を見守っていてやりました。ただ、なんとなく気まずい空気はどうしようもありませんでした。三上もさすがに後味がわるいと見えて、清さんにあまり口を利かなくなりました。その代り、わたくしはつとめて清さんに言葉をかけてやるようにしましたが、ともすると、わざとらしい調子になりがちで、自分でも気がさしました。清さんの方は、ふだんから無口な上に、なお無口になったようでしたが、別に変った様子は見えませんでした。
ちょっと気づいたことを申しますと、清さんは夜遅くまで書物に読み耽ってることがあったようです。たぶん、わたくしが後で見つけましたあの、登山とか仏教とかに関する書物だったのでしょう。夜中に、清さんの部屋に明るく電燈がついてるのを見て、わたくしは声をかけたことがありますが、はいとすぐ返事があって、これからすぐやすみますと言いまし
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