に引き取らせ、子供たちは自分の部屋で勉強しておりました。話の中途で、三上が書斎か応接室かに私を連れて話を持ちこむなら、これは怪しいと判断してもよいという、策略もあったのです。
あなたは清さんをどう思っていらっしゃいますか、と真正面からわたくしは切り出しました。まさか、いかがわしい関係をつけてはいらっしゃいますまいね、と直接に切り込んでゆきました。それならそれと、はっきりしておいて頂きたいものです、と念を押しました。
自分でもおかしなほど、事務的な話しかたでした。それというのも、三上の太い神経には、デリケートな言いかたでは役に立たないと思ったからです。ところが、事務的な直截な言葉に対してさえ、三上はけろりとしていて、一向に反応がありません。少し酒に酔ってもいましたが、面白そうににやにや笑っています。
「それは近頃にない楽しい話だ。僕の身辺も少し華やいできたかな。」
そんな風に茶化して、煙草を吹かしているではございませんか。
わたくしは当が外れたというよりは、なにか癪にさわって、あなたの方はとにかく清さんの方が怪しい、と言い出しました。三上の表情はとたんに変って、はっきり説明しなさ
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