を甘受するがよい。未来に対する信念や力や自省や努力やは、そういう所から生じてくる。峻厳な批判こそ真に人を救うものである。
評家の側より之を観れば、情状酌量の批評を事とする時には、恐らく一人としてその煩に堪え得る者はあるまい。その月に発表せられた作品全部に対して、もしくは批判せんとする作品全部に対して、その創作当時の各作者の事情を知悉することは恐らく不可能であろう。随って、甲には情状を酌量して乙には情状を酌量しないという偏頗な結果を来す。偏頗は文壇を害するものである。寧ろ一切の情実を去って、直接作品のみに対する公正な批判を下すべきである。――但し、私は茲で月評のことを云うのである。
月評をして、字義通りに月評たらしめよ。
私は月評と他の批評とを明確に区別したい。作品を評価するに、それが創作せられた当時の事情をも酌量し、また作者の性格天分にまで探り入ること、換言すれば、作品と作者とその周囲とを眼界に取り入れた批評、そういう批評の存在を私は是認する。否、そういう批評こそ真の批評であると信じている。最も必要な批評であると信じている。既に名を成した作家を正当な途に進ましむる助けとなるもの
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