した。腕をくんで、部屋の中をあるきまわりました。そしてふと、立ち止まりました。
 部屋の壁に、一枚の写真がかかっていました。トニイはそれをじっと見つめました。
「これは誰ですか」
「あたしのお父さんよ」とマリイが答えました。
「これが君のお父さん……」
「ええそうよ。二年前に、船が沈んで、なくなったの……。話したでしょう」
 マリイがふいにとんできました。
「あんた、あたしのお父さん知ってるの」
「なあに……ちょっと、似てる人があったから……」
「どんな人?」
「いや、なんでもないよ……」
 トニイは写真の前からはなれて、また歩きだしました。それから、きっぱりしたちょうしでいいました。
「とにかく、そのお金は、もすこししまっておくがいいよ。そして君は、花売りにでないで、家にじっとしておいでよ。僕にいい考えがある。僕に任せといてくれ。今に、はっきりさしてやるから……」

      三

 トニイはふしぎでなりませんでした。マリイの家にかかってる写真と、あるりっぱな紳士と……それがよく似ているんです。写真の方は、鳥打帽《とりうちぼう》に水夫服の、そまつなみなりです。紳士の方は、中折帽《な
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