街の少年
豊島与志雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)往《ゆ》き来
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一度|海賊《かいぞく》の
−−
一
港というものは、遠く海上を旅する人々の休み場所、停車場というものは、陸上を往《ゆ》き来する人々の休み場所、どちらもにぎやかなものです。その港と停車場とがいっしょに集まると、さらににぎやかでおもしろいものです。
インドのある都会の、港と停車場をむすびつける広場でのことです。港には毎日、船がではいりします。停車場には毎時間、汽車がではいりします。そして広場には、しじゅう人通りがたえません。いろんな人が通ります。世界各国の人が通ります。
その広場のかたすみ、橄欖樹《かんらんじゅ》のこかげに、トニイは店をだしています。車のうえに板をわたしたやたい店で、絵はがき、絵本、絵いり雑誌、木や竹のおもちゃ、象牙《ぞうげ》の細工物《さいくもの》など、いっぱいにならべています。そしてトニイは、そのやたい店のよこに、木の箱に腰《こし》かけて、本を読んでいます。
トニイは十五歳です。本を読むのがたいへん
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