う……とトニイは考えました。
 ところで、その奇術の紳士は、どこに住んでるどういう人かわかりませんでした。トニイは困りました。店をだすのもやめて、町の中をあるきまわり、ことに港の方をあるきまわりました。あの紳士がよく海に出るらしいのを知っていたのです。
 二三日むだに探しあるいた後、トニイは晩おそく、港のではずれのさびしい海岸にでて、そこのてすりにもたれて考えこみました。
 港はあちこちに多くの船がとまっていて、その燈火《あかり》が海にちらちらうつっていました。その間を、いっそうのモーターボートが、すばらしい速力で走ってきました。まっすぐに、トニイがいるさびしい岸の方へやってきました。
 おかしな舟だ……とトニイは感じて、物かげにかくれました。
 やがて、ボートは岸につきました。その時、一台の自動車が海岸づたいに走ってきて、ボートがついているところにとまりました。ボートから岸へはしごがかけられて、一人の男がのぼってきました。
 あの人だ! とトニイはあぶなく叫ぶところでした。照灯《しょうとう》の光にてらされたその横顔、姿、まさしくあの奇術《きじゅつ》の紳士でした。トニイは息をこらしまし
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