た。
 自動車から運転手らしい男がおりてきて、奇術の紳士となにかささやきあい、二人ではしごからボートの中におりていきました。しばらくして、四五人の男が、大きな箱をかかえてのぼってきて、その箱を自動車にのせ、上から毛布をかぶせ、みんなまたボートの中におりていきました。
 トニイはそっと物かげからはいだし、自動車のなかにしのびこみ、箱のそばに毛布の中にかくれました。
 奇術の紳士と運転手らしい男とは、ボートからのぼってき、二人とも運転手台にのり、そして自動車は全速力で走りだしました。

      四

 自動車は町にはいり、大きな建物の中庭にはいり、鉄の戸の前にとまりました。
 奇術の紳士と運転手らしい男とは、自動車からおりて、鉄の戸の敷居《しきい》のところにかがんで、なにか秘密なあいずをしました。やがて、戸が開かれて、四五人の男が出てきました。
「どうだ」
「上首尾《じょうしゅび》だ」
 低い声でそれだけささやきあい、そしてみんな、自動車のそばにやってきて、扉をあけ、箱の上の毛布をとりのけました。
 トニイは度胸《どきょう》をきめました。目がさめたばかりのようなふうをして、起きあがって
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