出せば、如何に高価でも多量でも充分に捌ける。それに、餌は容易く得られる。下水溝の露出してるところが多く、いとめがうようよ繁殖するに違いない。金魚の専門家で協力したいと言ってる者もあるそうである。
また、池のところだけ売って下さらないかとも言いました。――あれだけの面積を、ただ遊ばしておくのはつまらない。普通の地所と同じ価格で譲り受けたい。決して目障りになるようなことはしないそうである。
また、所有の地所をそっくり貸して下さらないかとも言いました。――勿論、今建ってる家は相当の価格で譲り受けた上のことである。それにバラックの建て増しをして、デパート式の商店にする。池のそばには喫茶店を出す。繁昌すること請け合いである。もっとも、二年なり三年なりと期限つきでも宜しいし、本建築を清水家でする場合には、いつでも、バラックは取り壊し、地所は返すと、そういう条件でも宜しい。決して迷惑はかけないそうである。
そういうことをいろいろと、大井増二郎は、遠廻しに匂わしたり露骨に言い出したりしました。なにか金儲けを考えてるようでもあれば、そうでないようでもあって、中心点がはっきりしませんでした。
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