か遠慮ぶかく、ひそひそ囁きあっていました。
全体が、ちょっと変梃な雰囲気で、好奇心に燃えながら後込みしてるかのようでした。
恒吉は煙草をふかしながら、池のまわりをぶらつきました。あたりの雰囲気に対して、そして皆の者に対して、皮肉な微笑を浮べたい思いでした。
そして、実際の池の中にいたのは、魚類だけでした。思いがけなく、真鯉が三尾、あとは小さな鮒や鮠のたぐいでした。昼食に一休みして、午後は底の泥中から塵芥を取り除くことになりましたが、その時に、沢山のエビカニや若干の鰻や泥鰌と、大きな鯰が一匹とれました。塵芥は甚だ少く、木片や竹切が少しくあったきりで、膝頭ほどの泥はわりにきれいでした。
大きな鉢にいけてある水蓮は、若葉を伸ばしかけていました。崖下の砂地から、冷たい水が可なり湧き出していました。
恒吉は聊か淋しい気持ちで、やたらに煙草をふかしながら庭をぶらつきました。余りにも予期した通りで、池の中には何一つ怪しいものはありませんでした。愚劣蒙昧に対する挑戦、そんな気概ももうどこかへ消散してしまっていました。――見物人も子供たちが少し残ってるきりでした。
高鳥真作たちは、池の泥底で
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