ね、教えて下さい」
「じゃあ教えてやろう。そのかわり、私の影も一つ、そこに写し取ってくれなくてはいけない。そして、明日の朝早くここに来れば、君たちの影法師は踊れるようになってるだろう」
子供たちは大変喜びました。そして塀《へい》の片隅《かたすみ》の空《あ》いてるところに、見馴れぬ男の影法師を写し取りました。もう太陽が高く昇っていましたので、男の影法師は低くぴしゃんこになって、おかしな格好でした。
「だめだよ、日が高くなってるから……。おかしいな」
「いや、それで結構《けっこう》だ」
そして男は、自分の変な影法師を見て、はっはっは……。と笑いました。
「それでは、明日の朝早く皆でそろっておいでよ」
男はそう言いいすてて、どこかへ行ってしまいました。
三
子供たちはその晩、おちついて眠れませんでした。自分たちの墨絵《すみえ》の影法師《かげぼうし》が、塀《へい》からぬけ出して踊りはねるというんですから、待ちきれませんでした。翌朝は早くから眼をさまして、皆誘い合わせました。大人《おとな》たちが何かたずねても、今にびっくりさしてやるという気持ちで、まじめくさった顔をして黙
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