ない者がある。ヤミヤだ。ヤミヤのそれに比ぶれば、俺のパイプなど、象牙ではあるが至って小型で、古くて黄色い艶が出てる代りに、吸口は歯で磨滅している。それでもまあ、ヤミヤ仲間には伍せないとしても、カツギヤの端っくれにははいり得ようか。
こんなことを俺に考えさしたのは、カツギヤの女の一人から、パイプを通すヘヤーピンを貰ったからであろうか。とにかく、それは、彼等仲間の仁義の一つに接したかのように、俺の心を朗かにし、そのカツギヤ宿に落着かせてくれた。
もう出かける客が多く、宿屋の中は次第にひっそりとなってくる。
俺は廊下に出て、また女中をつかまえた。
「姐さん、すまないが、酒を少々頼むよ。」
「お酒……あったかしら。」
「あるとも。分ってるよ。お客用のじゃない、内所で使うやつさ。肴はどうでもいいから、急いで頼むよ。」
「それじゃあ、少しね。それから、味噌汁も吸ったがいいよ。」
待つというほどもなく、いつのまにお燗をしたのか、女中はお盆をかかえて来た。大きな銚子二本、小鯵の干物数匹、たくあん。それと、普通の味噌椀の三杯ほどもはいりそうな大きな鉢に、味噌汁がたっぷりつけてある。
「あら、この
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