はモンペの、体躯逞ましい若者が多い。一見してそれと分るカツギヤたちだ。――その宿屋は、カツギヤ専門のものだった。外の街路の、夜半すぎの明るさや賑かさも、彼等専門のものだったであろうか。
廊下のつき当りに、広い板の間があって、洗面所となっている。俺はそこで歯ブラシを使いながら、同室の娘に対する警戒の念がまた湧いた。そこそこに顔を洗って、室に戻ってみると、娘はまだ眠っている。
なにか忌々しい気持ちで、俺は上衣やズボンの埃を荒々しくはらった。それから煙草を吸おうとすると、パイプがつまっているのだ。廊下に出て、女中を呼びとめて、それからヘヤーピンの一件だ。
かくして、よく通ったパイプで、ピースを吸っているうちに、俺は妙なことを発見した。
いったい、シガレットにパイプを使用する者は、あまり多くない。まあ、没落した若い貴族か、ハイカラぶったジャーナリストか気取りやの官僚か、そんなところだろう。それとても、ぴったり身についてはいない。シガレット・パイプが身につくのは、特殊の人柄に限る。殊に象牙のパイプはそうだ。けれども、その象牙のパイプの、太い新らしいのが、しっくり身について、少しもおかしく
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