二つ離して敷いてあった。俺たちはまたそこで眠った。
へんに騒々しいあたりの空気に、俺は眼をさました。気持ちの立ち直りから見て、だいぶ眠ったようだ。建て付けのわるい雨戸の隙間から、もう明るい光りがさしていた。
俺は起き上った。「お嬢さん」はまだ寝ている。布団を耳のあたりまでかぶって、向うむきに、すやすや眠っているらしい。俺の感じからすれば、あの帳場でも、またこの室でも、俺と殆んど同様に早く眠りこんだ。而も、見ず識らずの四十男の俺のすぐそばで。図々しいのであろうか。信頼しきってるのであろうか。よくは見なかったが、まだ二十歳前の年頃のようで、銘仙らしい着物やモンペは、縞柄はじみだが清楚な感じで、人造革の小型なボストンバッグを一つさげていた。
人に警戒心を起させるような何物もないので、却って逆に、ふっと、俺の心に警戒の念が湧いた。こんな娘にこそ油断はならないのだ。そう思うことがまた、一方では恥しく、むりにそれを克服しようとした。そして俺は上衣をぬぎすて、洗面具を持って、廊下に出た。
廊下には、あちこちに男女の姿が見えた。男はジャンパーもしくはジャケツにズボン、女はスエータにズボンもしく
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