出される前に、頭の中で全体的に組み上げられた作品としては、ジャン[#「ジャン」に傍点]・クリストフ[#「クリストフ」に傍点]以上のものは他にない。一九〇三年三月二十日のその日には、私の草稿(一)の中では全編の区分も決定していた。私は明らかに十の部分――十巻――を予見していたし、実現したのとほとんど同じくらいに、線も量も割合も定めておいた。
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(一) ジャン[#「ジャン」に傍点]・クリストフ[#「クリストフ」に傍点]に関する原草稿、覚え書や雑記の類はすべて、二|綴《つづ》りにして、ストックホルムのスウェーデン学会のノーベル文庫に、一九二〇年私の手で納められている。ただアントアネット[#「アントアネット」に傍点]の原稿は例外で、それは故郷ニヴェールの地に贈られた。(私はそれを一九二八年、ニヴェールのニエーヴル県立文庫に寄託した。)
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それらの十巻を書き上げるには約十年間を要した(二)。スイスのジュラ山中のフローブュール・スュール・オルタンで――後に、燃ゆる荊[#「燃ゆる荊」に傍点]の傷ついたジャン・クリストフが、樅《もみ》
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