おける現在の勝利ある革命ではない。あの当時(一九〇〇年より一九一四年の間)革命は打ち負かされていた。しかし今日の勝利者らをこしらえたものは昨日の敗者らである。
 私のノートの中には、除去されたその一巻のかなりつき進んだ草案がある。そこには、フランスとドイツとから放逐されてロンドンに逃亡し、各国からの亡命者や被追放者の群れに立ち交じってるクリストフがいた。彼はそれらの首領らの一人と親交を結んだ。それはマッチニ(七)あるいはレーニンのような素質を有する精神的偉人であった。この強力な煽動《せんどう》者は、その知力と信念と性格とによって、ヨーロッパのあらゆる革命運動の指導的頭脳となっていた。そしてクリストフは、ドイツとポーランドとに突発したそれらの運動の一つに、積極的に参加したのである。それらの事変や暴動や戦闘や革命各派の記述は、この巻の大部分を占めていて、最後に革命は抑圧され、クリストフは逃亡して、幾多の危険の後に、スイスに落ちのびた。そこでは情熱が彼を待ち受けていて、そして燃ゆる荊[#「燃ゆる荊」に傍点]となるのである。
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(七) 私は当時マッチニ
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