について私は、作中の人物と実在の人物とを同視しないように、読者に注意しておかなければならない。ジャン[#「ジャン」に傍点]・クリストフ[#「クリストフ」に傍点]はモデル小説ではない。しばしば現実の事件や個人を目がけてることはあっても、ただ一つの肖像をも――過去のも現在のも――含んではいない。しかしながら、記載されてるすべての人物はおのずから、創作の働きのなかで溶解され変形されたる、実人生の多くの経験や思い出によって養われている。したがって、現代の多数の著名な人々が、私の諷刺の中に自分の姿を認めるようなことになり、私にたいして深い憎悪をいだくようなことになった。その結果は、一九一四年戦役中、私の乱戦を超えて[#「乱戦を超えて」に傍点]の機会に、あるいはそれを口実に、現われたのだった。
[#ここで字下げ終わり]
 けれども、初めの計画に予定されながら実現されなかった一部分のことを述べるのは、おそらく興味あることかもしれない。それは女友達[#「女友達」に傍点]と燃ゆる荊[#「燃ゆる荊」に傍点]との間に置かれるはずだった一巻で、その主題は革命であった。
 それはソヴィエット社会主義共和国連邦に
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