「ジャン」に傍点]・クリストフ[#「クリストフ」に傍点]の中においてさえ、あらゆる巻が同じ厳密さで最初の要求に応じてはいない。初めの戦闘の清教主義は、かつて旅の終わり[#「旅の終わり」に傍点](女友達[#「女友達」に傍点]、燃ゆる荊[#「燃ゆる荊」に傍点]、新しき日[#「新しき日」に傍点])と題されていた第三部になると、ゆるんできている。主人公の上におりてきた年齢からくる和らぎをもってして、作品の音楽はいっそう複雑になり色合いに富んでいる。しかし頑固《がんこ》な意見はそれに注意を配らずに、全作品について、全|生涯《しょうがい》について、同じ一つの批判――あるいは黒のあるいは白の批判――で満足している。

 私のノートの綴《と》じ込みの中に、ジャン[#「ジャン」に傍点]・クリストフ[#「クリストフ」に傍点]の裏面を説明する豊富な記述が、やがては見出されることだろう。とくに、広場の市[#「広場の市」に傍点]および家の中[#「家の中」に傍点]に記載されてる現代社会に関する事柄について。しかしそのことを語るにはまだ時期が早い(六)。
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(六) このこと
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