伝[#「マッチニ伝」に傍点]の準備をしていて、それは私の「英雄伝」の中にはいるはずになっていた。数年間かかって記録をとっていた。ここに述べるには不穏当な種々の理由から、私はその計画を中止したのである。
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私はまた、一世代のこの長い詩劇への結論として、人生の偉大な闘士が朗らかにはいりこむべき、一種の「自然交響曲」を――「海の静寂(八)」ではなく、「大地の静寂」を――計画していた。
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(八) ゲーテの名高い詩の表題の意味で、それはベートーヴェンによって作曲されている。
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私はこう書いている。「これらの人間的叙事詩に、革命劇にたいして企図してるのと同様な一つの結末(九)を与えたい欲求に、私はいつも立ちもどってくる。すなわち、あらゆる情熱も憎悪も自然の平和の中に融《と》け合う。無窮の空間の静寂が人間の擾乱《じょうらん》を取り囲んでいる。人間の擾乱は、水中に投ぜられた小石のようにその中に没する。」
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(九)「革命劇」への結末はその後書かれた。それは獅子座の流星群
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