も、その特性を見出した。カルヴァン派、ジャンセニスト、ジャコバン党員、産業革命家、その他各方面において、空望も落胆もなしに自然と戦ってる、悲観的理想主義の同じ精神が――往々国民を粉砕しながらも、なお国民を支持する鉄骨が――現われていた。
クリストフはそういう神秘な争闘の息吹《いぶ》きを呼吸した。そして、フランスが強硬な誠実さをうち込んでるその熱狂的信念の偉大さを、了解し始めた。統一[#「統一」に傍点]により多く慣れてる他の国民は、それについてなんらの観念ももってはいなかった。クリストフも初めはすべての外国人と同じく、フランス人の専制的精神とフランス共和政が真正面にふりかざしてる魔法文字との間の、あまりに明らかな矛盾にたいして、駄洒落《だじゃれ》を並べて喜んでいた。しかるに初めて彼は、フランス人が尊重してる尚武的な自由[#「自由」に傍点]の意味を、おぼろに理解し始めた。それこそ理性[#「理性」に傍点]の恐るべき刃《やいば》であった。クリストフが考えていたのとは違って、それは彼らにとっては、響きのよい美辞でもなく漠然《ばくぜん》たる想念でもなかった。理性の要求が何よりも第一となる民衆にあ
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