つつあった。
生気ある理想主義と熱烈なる自由主義との同様な息吹《いぶ》きが、フランスにおける他の宗教をもふたたび活気だたせていた。新しい生命のおののきが、新教やユダヤ教の大きな麻痺《まひ》した身体に流れていた。理性の力をも感激の力をも犠牲にしない自由な人類の宗教を創《つく》り出さんと、すべての人々が雄々しい競争をなして努力していた。
かかる宗教的熱意は、宗教のみが有してるものではなかった。それはまた革命運動の魂であった。そしてこの方面においては悲壮な性質を帯びていた。クリストフがこれまでに見たものは、下等な社会主義――政治屋連中の社会主義にすぎなかった。その政治屋連中は、幸福[#「幸福」に傍点]という幼稚粗雑な夢を、なお忌憚《きたん》なく言えば、権力[#「権力」に傍点]の手に帰した科学[#「科学」に傍点]が得さしてくれると彼らが自称してる、一般の快楽[#「快楽」に傍点]という幼稚粗雑な夢を、飢えたる顧客らの眼に見せつけてるのであった。その嫌悪《けんお》すべき楽天主義に対抗して、労働組合を戦いに導いてる優秀者らの深奥熱烈な反動が起こってるのを、クリストフは見てとった。それは、「壮大な
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