った。
詩人たち――この美しい名称は、新聞雑誌やもろもろの学芸院などによって、虚名と金銭とに飢えた饒舌《じょうぜつ》家どもにやたらに与えられているが、それに真に価する唯一の人たち――その詩人たちは、事物の外皮を切り裂くことができずにただかじってばかりいる、破廉恥な修辞法と賤《いや》しい写実主義とを軽蔑《けいべつ》して、魂の中心に立てこもり、形態と思想との世界が、あたかも湖水に落ちる急湍《きゅうたん》のように吸い込まれて、内的生活の色に染められる、神秘な幻像のうちに立てこもっていた。世界を改造せんために自己のうちに閉じこもるそういう理想主義は、あまりに固執的だったので、一般の者には近づきにくかった。クリストフでさえ初めはそれを理解しなかった。「広場の市」のあとで、あまりにその接触が唐突《とうとつ》だった。猛烈な争闘と生々《なまなま》しい光とから出て、沈黙と暗夜との中にはいったようなものだった。耳が鳴り響いていた。もう何にも見えなかった。彼は生を熱愛していたので、初めのうちはその対照が不快だった。フランスをくつがえし人類をゆるがす熱情の急流が、外部には怒号していた。そしてちょっと見ただけ
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