言を人に聞かせることができないのだ! 新聞も雑誌も芝居も皆ことごとく敵の手中にある……。印刷機関はすべて思想物を避け、快楽の道具か党派の武器としてしか思想を認めない。いかなる団体も倶楽部《クラブ》も、われわれが堕落しなければ通してはくれない。困窮と極度の勉励とのためにわれわれは圧倒されてるのだ。政治家らは富むことばかりを考えていて、買収し得る無産階級にしか興味を寄せない。有産階級の者らは冷淡で利己主義であって、われわれが死ぬるのを傍観している。わが民衆はわれわれのことを知っていない。われわれと同じく戦いわれわれと同じく沈黙に包まれてる人々でさえ、われわれの存在を知らないでいるし、われわれもまた彼らの存在を知らない……。災いなるパリーなるかなだ! もちろんパリーは、フランス思想のあらゆる力を集合しながら役にもたった。しかしパリーがなした悪は少なくともその善に匹敵し得る。そして現在のような時代にあっては、善でさえも悪に変化してゆく。似而非《えせ》優秀者らが、一度パリーを奪って言論のらっぱの口をふさいだだけで、フランスの残りの声もみな抑圧されてしまう。のみならず、フランス自身もそのために身を
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