的才能に執着して、それから受けた光明を、神聖な委託物として自分のうちに納め、それを消そうと努める害悪な息吹《いぶ》きに反抗して、必死に守っているのだ――異人種どもの腐爛《ふらん》した雰囲気《ふんいき》を周囲に感じながら、常に孤独であって、彼らから蠅《はえ》の群れのように思想によりたかられ、その忌まわしい蛆虫《うじむし》から理性をかじられ心を汚されているのだ――われわれを保護すべき役目をもってる人々から、指導者たる立場の人々から、下劣卑屈な批評家たちから、われわれはいつも裏切られており、彼らはわれわれと同人種であることを許されんために、敵に諛《へつら》ってばかりいるのだ――民衆からわれわれは見捨てられていて、民衆はわれわれのことを気にも留めず、われわれのことを知りさえもしないのだ……。民衆から知られるいかなる方法をわれわれはもっていよう? われわれは民衆まで達することができないのだ……。ああ、これがもっともつらいことなんだ! われわれと同じ考えをもってる者がフランスには無数にいることもわかっているし、われわれは彼らの代弁をしてるのだということもわかっているけれども、しかもわれわれは自分の
前へ 次へ
全333ページ中46ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング