]、失意、悲哀、または、苦しみ楽しみ創造する、かの晴れやかな力、かの陶酔、または、自分の魂の魂であり隠れたる神である、輝かしい生とその崇高な影とを抱きしめる、かの愉悦。それらのすべてのものが今や彼のために遠くに輝き出してきた。欲望の騒乱、思想の混乱、過失、錯誤、激しい戦い、それらのものが、洋々たる流れによって永遠の目的のほうへ運ばれてゆく逆巻きや渦《うず》巻きのように、彼の眼には映った。彼は艱難《かんなん》な年月の深い意義を見出した。しだいに大きくなる河流は、各艱難ごとに、一つの障害を打ち破って、狭い谷間からより広い谷間へ出で、やがてその谷間を満たしてしまうのだった。そしてそのたびごとに、限界はさらに広がり、空気はさらに自由なものとなった。フランスの丘陵とドイツの平野との間で、その河流は牧場の上まであふれ、丘の麓《ふもと》を蚕食し、両国から来る水を集め取り入れながら、努力して自分の通路を開いていった。かくてそれは両国の間を流れたが、両国を分離せんがためにではなく、両国を結合せんがためであった。両国はこの河流のうちで縁を結んでいた。そしてクリストフは初めて、自分の天命を自覚した。それは、
前へ 次へ
全333ページ中314ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング