ソはやっつけられるばかりです。」
アンドレ・エルスベルゼはよく聞いていなかった。彼は肩をそびやかして、漠然《ばくぜん》たる威嚇《いかく》だけで満足していた。一握りの砂でも歯車仕掛けの急所に投ぜらるれば、機械全部をこわすことができる、と彼は言っていた。
しかしながら、理論的な方法でゆっくり論ずることと、思想を実行に移すこととは、ことにそれを即座に決行しなければならない場合には、まったく別事である……。人の心の底を大きな波濤《はとう》が過ぎる時こそ、痛烈な時期である。人は自分を自由だと思い、自分の思想の主人だと思っている。ところがもう否応なしに引きずり込まれるのを感ずる。ある隠れた意志が人の意志に反対してくる。そのときになって未知の主長[#「主長」に傍点]を、人類の大洋を支配する法則の主体たる不可見の力[#「力」に傍点]を、人は初めて発見する……。
自分の信念にもっとも堅固でありもっとも確信してる知力ある人々も、その信念が消え去るのを見、決意するのを躊躇《ちゅうちょ》し恐れ、そして往々、思いもかけなかった方向へ決意しては、みずからいたく驚いていた。戦争を攻撃するのにもっとも熱烈だった
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