B一人で社会の精神状態を一挙に変えることができるものか。それはあまりによすぎる事なんだ。しかし君は自分で知らずにもう多くのことをしている。」
「何を僕がしてるんだい?」とクリストフは言った。
「君は一個のクリストフとなってる。」
「それがなんで他人のためになるのか。」
「大いにためになるさ。だがクリストフ、君はただ君自身でありたまえ。僕たちのことに気をもまないようにしたまえ。」
しかしクリストフはあきらめられなかった。彼はなおシャブラン少佐と議論をつづけ、時には猛烈に言い合うこともあった。セリーヌはそれを面白がっていた。彼女は黙って仕事をしながら二人の話を聞いていた。議論には加わらなかった。けれど以前よりも快活になったように見えた。以前よりも多くの輝きを眼つきに帯びていた。前よりも広い空間が彼女のまわりにできたようだった。彼女は読書を始め、外出することがやや多くなり、興味をもつ事柄が多くなった。そしてある日少佐は、エルスベルゼ兄弟のことでクリストフと論争してるとき、彼女が微笑《ほほえ》んでるのを認めた。彼は彼女にどう思うかと尋ねた。彼女は平然と答えた。
「クラフトさんのほうが道理《も
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