ソ合った。クリストフは初め、二人の客の間に面白からぬ言葉がかわされはすまいかと恐れた。しかし反対に二人は、非常な丁重さを示し合った。彼らは安全な話題について話をした、旅行の話や、他人にたいする経験談など。そして彼らは二人とも、絶望すべき多くの理由をもってたにもかかわらず、架空的な希望や福音書的な精神や温厚さなどに満ちてることを、二人とも示した。彼らはたがいに相手にたいして、ある皮肉さの交じった同情の念を覚えた。ごく慎み深い同情の念だった。彼らはけっしてたがいの信仰の奥底に触れ合わなかった。たがいに会うことはごくまれであり、また会おうとも求めなかった。しかし顔を合わせるときにはそれを喜んでいた。
二人のうちでコルネイユ師のほうがより独立的な精神をもっていた。クリストフは初めそれを予期していなかった。がしだいにクリストフは、彼の宗教的な自由な思想が、力強い清朗な熱のない神秘観が、きわめてしっかりしてることを認めていった。その神秘観は、彼の牧師としてのあらゆる思想、日常生活のあらゆる行為、あらゆる世界観照のうちに、沁《し》み通っていて、あたかもキリストが神のうちに生きていたと彼が信じてると
前へ
次へ
全333ページ中222ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング