ノなかった。しかしパリー人というものは、自分と無関係なことにいつまでも興味をもつものである。そしてついにその秘密は、ルーサン夫人の口からクリストフ自身の耳にまで伝わった。夫人はある日音楽会で彼に出会って、あのオリヴィエ・ジャンナンと喧嘩《けんか》したのはほんとうかと尋ねた。そして、彼とオリヴィエ以外には知ってる者がないはずの事柄にそれとなく言及して、仕事のことを尋ねた。だれからそんな詳しいことを聞いたのかと尋ねられて、リュシアン・レヴィー・クールから聞いたのであり、レヴィー・クールはオリヴィエから聞いたそうであると、彼女は答えた。
 クリストフはそれに参ってしまった。激烈で批評眼のない彼には、その噂《うわさ》がほんとうらしくないことを取り上げる考えは起こらなかった。彼はただ一つのことしか見なかった。オリヴィエに打ち明けたその秘密が、リュシアン・レヴィー・クールにもらされたのだ! 彼は音楽会にじっと残ってることができなかった。すぐに席を立った。周囲には空虚しか感ぜられなかった。彼はみずから言っていた、「友に裏切られた!……」
 オリヴィエはコレットのもとへ行っていた。クリストフは自分の室
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