ヌい一言を聞くと、胸せまる思いをした。彼は高慢心からそれを口には出さず、自分自身のうちに潜み込んだ。そのうえ彼は、あらゆる大芸術家のうちにある無意識的利己心の突然の閃《ひらめ》きを、友のうちに認めないではなかった。そしてある場合には、自分の生命もクリストフにとっては、美《うる》わしい音楽に比して大した価値をもってはしないと、感ずるのであった。――(クリストフはそのことを彼に隠すだけの労をほとんど取らなかった。)――彼はよくそのことを理解して、クリストフのほうが道理だと思った。しかしそれは悲しいことだった。
 それにまた、クリストフの性質中には各種の混濁した要素があって、オリヴィエにはそれがよく理解できず不安を覚えさせられた。それは奇怪な恐ろしい気分の突発だった。ある時は口をききたがらなかった。あるいはまた、ひどい意地悪をしたがって人を困らせようとばかりした。または、身を隠してしまって、その一日じゅう晩まで姿を見せなかった。あるときなどは二日間も引きつづいていなくなった。何をしてるのかだれにもわからなかった。彼自身もよくは知らなかった。……実際、彼の力強い性質は、その狭い生活と住居の中に
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