驕B実をいえば、温情は彼らの大多数にあっては、否定的なあるいは中性的な形のままで、寛容、無関心、悪を行なうことの嫌悪《けんお》、皮肉な許容、などとなる。ところがモークにあっては、その温情がひどく活動的だった。だれかにもしくは何事かに、いつでも身をささげようとしていた。貧しい同宗の者らのために、ロシアの亡命者らのために、あらゆる国民のうちの迫害された者らのために、不幸な芸術家らのために、あらゆる不運のために、あらゆる健気《けなげ》な事件のために、いつでも尽くそうとしていた。彼の財布はいつも口をあいていた。いかにその中身が少ないときでも、どうにかして多少の金を取り出した。まったく空《から》である場合には、他人の財布から金を引き出した。人の世話をする場合になると、自分の心労や足労を意に介しなかった。単純に――わざとらしいほど単純に人の世話をした。単純で実直だとあまりに自称しているのは瑕《きず》だったが、しかし多とすべきは、実際彼が単純で実直なことだった。
クリストフはモークにたいするいらだちと好感との板ばさみになって、一度餓鬼大将みたいな残忍な言葉を発したことがあった。すなわちある日、彼は
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