S打たれた。彼はことに、ごくさっぱりしていて、少しも無駄な言葉を発しなかった。誇張したお世辞は少しも言わなかった。ただ慎み深い一言だけで済ました。しかし人の役にたとうと願っていた。人から頼まれないうちに、もう何か世話をしてくれていた。彼はたびたびやって来、あまりたびたびやって来た。そしてたいていいつも何か吉報をもたらした。二人のどちらかへ仕事をもって来、オリヴィエのために芸術上の論文執筆や講義の口をもって来、クリストフのために音楽教授の口をもって来た。彼はけっして長居をすることがなかった。彼は押しつけがましいことをわざと避けていた。たぶんクリストフのいらだちに気づいたのであろう。クリストフはそのカルタゴの偶像みたいな髯面《ひげづら》が戸口に現われるのを見ると、いつもまっ先に我慢しかねるような様子をするのだった。――(彼はモークをモロックと呼んでいた。)――しかしモークが帰ってゆくと彼はすぐに、そのまったくの温情にたいして満腔《まんこう》の感謝を覚ゆるのだった。
温情はユダヤ人には珍しいことではない。それはあらゆる美徳のうちで、彼らがたとい実行しないときでももっともよく容認するものであ
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