ニを恐るればなり。――主よ、何時までなりや。――家にはもはや人なく土地は荒廃に帰するまで、しかせよ……。
[#ここで字下げ終わり]

「いや僕は生まれてからまだかつて、これほど邪悪な男を見たことがない……。
「僕とても、言葉の力を認めないほど馬鹿ではない。しかし思想を形式から引き放すことはできないのだ。僕がときとしてこのユダヤの神を感嘆することがあるとしても、それは虎《とら》などを感嘆するのと同じ態度でなんだ。種々の怪物を生みだすシェイクスピヤでさえもこんな憎悪《ぞうお》の――神聖な貞節な憎悪の――英雄を、うまくこしらえ出すことはできなかった。こんな書物は実に恐ろしいものだ。狂気はすべて伝染しやすい。そしてこの書物の狂気のうちには、その殺害的な傲慢《ごうまん》さに純化的主張があるだけに、さらに大なる危険がこもっている。イギリスが数世紀来それを糧《かて》としてるのを思うと、僕はおののかざるを得ない。イギリスと僕との間に海峡の溝渠《こうきょ》が感ぜられるのは仕合わせだ。ある民衆が聖書《バイブル》で身を養ってる間は、僕はそれをまったくの文化の民だとはけっして信じないだろう。」
「それでは君は
前へ 次へ
全333ページ中148ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング