とがあるような気がした、その二本の樹《き》と沼とを……。――そして突然、彼は眩暈《めまい》の状態に陥った。それは生涯の平野に時おり開かれるものである。時《タイム》の中の穴である。自分はどこにいるのか、自分はだれであるのか、いかなる時代に生きているのか、幾世紀以来こうしているのか、もはやわからなくなってしまう。クリストフは、これはかつてあったことで、今のことは今あるのではなくて他の時にあったのだ、というような感じがした。彼はもはや彼自身ではなかった。彼は自分自身を、かつてここにこの場所に立っていた他人のようなふうに、外からごく遠くからながめていた。種々の見知らぬ思い出のざわめきが、耳には聞こえていた。彼の動脈は音をたてていた……。
――このように……このように……このように……。
幾世紀もの唸《うな》り声……。
彼以前のクラフト家の多くの人たちも、彼が今日受けてる試練を受け、郷土における最後の時間の悲嘆を味わったのだった。たえず放浪する血統、独立独歩と焦慮とのために至る所から追い払われる血統。どこにも定住するを許さない内心の悪魔から、常にさいなまれる血統。しかももぎ離される土地に執
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