に違いないとも! それがお前たちの自慢になりますか。あの人がいなかったら、お前たちは馬鹿にされ、私たちも馬鹿にされるところだったじゃないか。意気地なしめ、臆病《おくびょう》者!」
 彼女は相手の男を呼びかけた。
「そしてお前さんは、何にも言わないで、へいへいして、蹴《け》ってくださいとお臀《しり》を出していたね。も少しでお礼でも言うところだったろう。恥ずかしくないんですか。……皆さんは恥ずかしくないんですか。お前たちは男じゃない。勇気と言ったら、いつも地面に鼻をつけてる小羊くらいなものだ。あの人が手本を示してくれたのはもっともです。――そして今になって、なんでもあの人に背負わせたいんでしょう。……いったい、そんなことってあるもんですか。私がさせやしません。あの人は私どものために喧嘩《けんか》をしてくれました。あの人を助けるか、いっしょに祝杯を挙げるかがほんとうです。私はきっぱりそう言います!」
 ロールヘンの父は彼女の腕を引っ張っていた。夢中になって怒鳴っていた。
「黙れ、黙れ!……黙らないか、こら!」
 しかし彼女は父を押しのけて、ますます言い募った。百姓らは叫びたてていた。彼女は鼓
前へ 次へ
全527ページ中504ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
豊島 与志雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング