さないで、逃げ出すのではないことを感じさせようとした。しかし下士はすっかりクリストフのことを忘れていた。だれもクリストフに気を配ってる者はなかった。
 彼は扉のハンドルを回した。も少しで外に出るところだった。しかし無難では出られない運命にあった。室の奥に騒ぎがもち上がっていた。兵士らは酒を飲んだあとに、こんどは踊ろうとしていた。娘たちにはそれぞれ相手の男があったので、兵士らはその男どもを追い払った。男どもはなされるままになった。しかしロールヘンは言うことをきかなかった。クリストフの気に入った勇ましい眼つきと意志の強そうな頤《あご》とを、彼女は無駄《むだ》にもってるのではなかった。彼女が狂気のように踊ってる時、彼女を選んだ下士は、彼女からその相手の男を奪いに来た。彼女は足を踏み鳴らし、叫びたて、下士を押しのけながら、こんな無骨者と踊るものかと言いたてた。下士は追っかけてきた。彼女が人々の後ろに隠れると、彼はその人々をなぐりつけた。ついに彼女はテーブルの後ろに逃げ込んだ。そこでちょっと彼の手からのがれると、息をついてののしりだした。彼女は抵抗してもなんの役にもたたないことを知っていた。癇癪
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