してもしのがれても、牢屋《ろうや》にぶちこまれるかもしれない。わりに合わない話だ。喧嘩をしかけられないうちに出かけよう。」
しかし彼の傲慢《ごうまん》心はそれを拒んだ。こういう奴どもから逃げ出すふりをしたくなかった。――陰険|暴戻《ぼうれい》な眼つきは彼にすえられた。彼は堅くなって、憤然とにらみ返した。下士はちょっと彼を見調べた。クリストフの顔つきにおかしくなった。隣りの兵士を肱《ひじ》でつっついて、冷笑しながら青年を指《さ》し示した。そして早くも、口を開いて毒づこうとしかけた。クリストフは腹をすえて、コップを発止と投げつけようとした。――がこんども、偶然に助けられた。酔漢が口をきこうとしたとたんに、一組のへまな踊り手が彼に突き当たって、そのコップを下に落とさした。彼は猛然と振り向いて、盛んにののしり散らした。彼の注意はそちらにそらされてしまった。彼はもうクリストフのことを考えていなかった。クリストフはなお数分間待った。それから、相手がもう悪口を言い出そうとしないのを見て取ると、立ち上がって、静かに帽子を取り、扉《とびら》の方へゆっくり歩いていった。彼は相手がすわってる腰掛から眼を離
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